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2025.12.23

【Q&A】017 個人で診療所を経営する医師の離婚

Q 個人事業主として診療所を経営しています。妻と離婚する場合、財産分与として財産の2分の1を渡すこととなった場合、診療所の土地建物や医療機器までその2分の1を渡さないといけないのですか。そうなると診療所を継続できなくなります。何か良い手段はないですか。

 

 

 

 

 

A

離婚の際の「財産分与」(民法768条)は婚姻中に夫婦で協力して築いた財産を清算するもので原則として2分の1ずつ取得するとされています。その「財産」には診療所を経営している場合の土地建物や医療機器なども含まれます。

ただし、どの財産をどのように分けるのか(どちらに帰属させるのか)については、必ずしもすべての財産を2分の1に分けてそれぞれに帰属させる必然性はありません。話し合いにより柔軟に解決することも可能です。

 

◆解決策:代償分割(だいしょうぶんかつ)

事業用資産(医療機器、診療所の土地建物など)は、経営者が単独で所有権を確保し、その評価額の半分に相当する「金銭」を奥様に支払う方法で解決することも可能です。これを「代償分割」と呼びます。 これにより、診療所の設備や場所を失うことなく、経営を継続することが可能です。

 

重要なポイントと交渉の余地

  1. 「時価」の評価: 医療機器は購入価格ではなく、経年劣化を考慮した「現在の価値(時価)」で計算します。これにより、分与すべき金額を適正な(低い)水準に抑えられる可能性があります。
  2. 支払い能力の確保: まとまった現金がない場合、分割払いの合意を取り付ける交渉が必要です。無理な支払いで資金繰りがショートしないよう、長期的な計画が不可欠です。

 

個人事業主の場合、家計と事業会計が密接に関わっているため、「どこまでが財産分与の対象か」「いくらと評価するか」で激しい争いになりがちです。 診療所を守り抜くためには、法律と税務の両面からの緻密な立証が必要です。

 

また仮に診療所の不動産や医療機器を購入するためにローン(借り入れ)があり、まだ残っていた場合は、その点も考慮されます。

 

➤「純資産」での評価(差し引き計算)

財産分与の対象となるのは、プラスの財産からマイナスの財産(借金)を引いた「残額」です。 例えば、診療所の不動産や機器の価値が「5,000万円」あっても、ローンの残債が「3,000万円」あれば、分与対象額は「2,000万円」となります。 先生は、診療所とローンをそのまま引き継ぎ、奥様には差額の半分の「1,000万円」を支払えば済むことになります。ローン残高が大きければ大きいほど、奥様へ渡す現金は少なくなります。

 

➤オーバーローン(債務超過)の場合

もし、資産価値よりもローン残高の方が多い(オーバーローンの)場合、その資産の評価額は「ゼロ」とみなされるのが一般的です。 基本的に、マイナス分(借金)まで奥様に背負わせることはありませんが、逆に言えば、その資産に関しては**「一銭も渡さなくて良い」**ということになります。

 

➤【最重要】連帯保証人の問題

もし、奥様が事業用ローンの「連帯保証人」になっている場合は、非常に厄介です。離婚しても銀行は保証人の解除になかなか応じてくれません。 この場合、先生が借り換えを行って保証人を外すか、万が一の際に先生が全額負担する旨の公正証書を作成するなど、特別な手当てが必要です。

 

このように、個人事業主の経営者が離婚をする場合、財産分与にはプライベートな財産や債務だけでなく、事業用の財産や債務も含まれることがあり、財産分与の話し合いが円滑に進まない場合は当事者にとりストレスになるだけなく、診療所のスタッフや患者様にも迷惑をかけてしまうことになります。

 

診療所の経営者が離婚を考える場合はこのような複雑な財産分与が含まれることに注意し、専門家の助言、支援を求めるなど慎重に対応することが重要です。

離婚でお困りの際は、ぜひ私たちにご相談ください。一緒に悩みを解決しましょう。